家賃を5,000円下げても、内見の足は遠のいたまま
「広告料も上乗せした。家賃も思い切って下げた。それでも内見が入らない」——そう肩を落とすオーナー様のお話を、私もこの1ヶ月で何件もお聞きしました。築20年を超えるアパート、相続したばかりの一棟、長らく満室だった物件が突然苦戦し始める。決して珍しい話ではありません。
2026年に入ってからのご相談で特に増えているのが、「下げ続けるしかないのでしょうか」という焦りのお言葉です。少子化と新築供給の継続で、賃貸住宅は完全な借り手市場。同じエリアで競合が一気に増え、これまでの“黙っていても埋まる”時代の感覚では、もう戦えないのが正直なところです。
それでも、家賃を下げる前に、もう一度だけ立ち止まってほしいのです。値下げは即効性こそありますが、一度下げた家賃はなかなか戻りません。短期の埋め合わせのために、長期の収益力を削ってしまっている——そのご相談が、ここ数年で本当に増えました。
「条件」ではなく「印象」で決まっている
不動産管理18年、水回り施工15年の現場で痛感してきたのは、入居の可否はスペック表ではなく 内見の最初の5分 で大半が決まる、ということです。条件面で他物件と並んだ瞬間、入居希望者の目は「居室の広さ」ではなく「洗面台のサビ」「浴槽の黄ばみ」「キッチンのコーキングの黒ずみ」に吸い寄せられます。
つまり、家賃を下げても埋まらない物件の多くは、価格の問題ではなく「自分の生活がここで気持ちよく始められるか」という肌感覚の問題に行き着くのです。これは値下げでは絶対に解決できません。
空室が埋まらない、3つの本当の原因
原因① 水回りの「古さ」が一発で伝わってしまう
浴室・洗面・トイレ・キッチン。この4箇所は、内見者の評価がもっとも厳しくなるエリアです。特に築20年を超えた3点ユニットバス(浴槽・トイレ・洗面が一体)は、清掃が行き届いていても「古い物件」という印象を与えがちです。私自身も、現場で何度も「お部屋自体は気に入ったけれど、お風呂が…」という言葉を耳にしてきました。水回りは“清潔感”ではなく“現代性”が見られているのです。
築年数の古さはどうにもなりませんが、水回りの“見た目年齢”はリフォームで一気に若返ります。15年現場に立ってきた経験からお伝えすると、浴室と洗面の2箇所だけでも入れ替えれば、内見者の反応は別物になります。
原因② 募集の「窓口」が狭すぎる
「長年お世話になっている管理会社1社に任せきり」——これは、相続後のオーナー様に特に多いパターンです。私自身も、ある築25年のアパートで募集を複数社に広げただけで、2週間で2件の内見、1件の申込みが入った経験があります。同じ部屋でも、見せ方ひとつで申込み数は変わります。窓口の狭さは、それだけで機会損失の原因になります。
専任媒介を一般媒介に切り替えるだけでも、ポータルサイトへの掲載数は数倍になります。今の管理会社との関係を壊す必要はありません。「並行して募集力を広げる」と一言伝えるだけで十分です。
原因③ ポータル掲載写真が「古い・暗い・少ない」
内見の前に勝負はすでに始まっています。スマホで物件を探す時代、ポータルサイトのサムネイル1枚で次の物件にスワイプされるのが現実です。10年前に撮ったままの暗い写真、3〜4枚しかない掲載——これでは、どれだけ良い物件でも候補に入りません。私が関わる物件では、まずここから手を入れることがほとんどです。
掲載写真の入れ替えは費用ゼロでできる空室対策です。それなのに着手していないオーナー様が、本当に多いのです。
「全部やる」ではなく「一番効くところから」
解決策はシンプルです。費用対効果のいちばん高い場所から、一つずつ手を入れていくこと。具体的にはこの順番をおすすめしています。
第一に、水回りのリフレッシュ。賃貸用ユニットバスの交換であれば、50万〜80万円が一つの目安です。投資としては小さくありませんが、家賃を5,000〜10,000円アップできた事例、3週間で入居が決まった事例、空室期間短縮による損失回避を合わせて2年程度で投資回収できる試算も多く見てきました。3点ユニットバスを2点に分離する工事も、家賃アップ余地が大きい施策です。
第二に、募集の窓口拡大。専任媒介で1社に絞っているなら、まず一般媒介に切り替えるだけでも露出が大きく変わります。広告料(AD)の見直しも併せて行うと効果が出やすいです。
第三に、掲載写真の総入れ替え。これはほぼゼロ円でできる空室対策です。明るい時間帯、広角、20〜30枚——この3点を満たすだけで反響は変わります。撮影は晴れた日の午前中、カーテンを開け、照明をすべて点けて行うのが基本です。
今日からできる、3つの行動
「リフォームはハードルが高い」「いきなり大きな判断は怖い」——そうしたお気持ち、よく分かります。だからこそ、まずは今日できることから始めてください。
① 自分の物件をスマホで内見してみる。ポータルサイトを開き、入居希望者になったつもりで自分の物件ページを眺めてみてください。「ここに住みたいか?」と自問するだけで、最初に直すべき場所が見えてきます。
② 水回り4箇所を写真に撮る。浴室・洗面・トイレ・キッチン。客観的に画像で見ると、現場で気付けない劣化が一気に見えてきます。コーキングの黒カビ、シンクのサビ、床のフカつき、優先順位を立てる材料になります。
③ 「みらいエコ住宅2026事業」など補助金を必ず確認する。2026年の制度では、省エネ・バリアフリーのリフォームで最大40〜100万円の補助が出るケースもあります。制度を知っているかどうかで、実質負担は驚くほど変わります。知らないまま自己負担で進めてしまうのは、本当にもったいないことです。
空室は、値下げではなく“正しい順番”で埋める
家賃を下げることは、いつでもできます。だからこそ、それは最後の手段にしてください。水回りの印象を整え、募集の窓口を広げ、掲載写真を磨く。この順番で動けば、値下げをしなくても空室は確実に動き出します。
私自身、現場で工事をする職人として、また18年管理を続けてきた一人のオーナーとして、「もっと早く相談してくれていれば」と思う場面が今もあります。だからこそ、お一人で悩み続けないでください。
水回りの工事費用、空室対策の優先順位、補助金の使い方など、お困りごと相談はお気軽にどうぞ。あなたの物件に合った“一番効く一手”を、一緒に探させていただきます。
