「内見の問い合わせはちらほら来るのに、なぜか申し込みまで進まない…」――そんなお悩み、抱えていませんか?募集条件を見直しても、広告写真を撮り直しても、駅からの距離も変わらないのに、お隣の物件は埋まってウチだけ空いたまま。オーナー様のお気持ち、痛いほどわかります。
私自身も、築28年の所有アパートで半年間1部屋が空いた経験があります。賃料を下げ、フリーレントもつけて、それでも決まらない。原因を本気で突き止めにいったとき、見えてきたのは「水回り」、特に3点ユニットバスの存在でした。今日は、不動産管理18年・水回り施工15年・現在も不動産会社を経営している立場から、本当のところをお話しします。
表面的な値下げで解決しない、空室の「本当の理由」
多くのオーナー様が空室対策と聞いて最初に手をつけるのが、賃料の値下げと広告料の上乗せです。もちろん効果がないわけではありません。ただ、それで決まる物件と決まらない物件が、はっきり分かれます。決まらない物件には、ほぼ例外なく「内見で気持ちが冷める瞬間」が存在しています。
家を借りるという行為は、毎日のお風呂・キッチン・トイレと向き合う暮らしを選ぶ行為そのものです。図面で見ていた間取りや築年数が、内見で実物の水回りを見た瞬間にひっくり返る。これが、賃料を下げても申し込みに至らない最大の理由です。
とくにここ数年、20代~30代の入居検討者の傾向は明確に変わりました。SNSや動画で「キレイな部屋に住む暮らし」を毎日見ているので、水回りへの目が肥えているのです。古い3点ユニットバス、サビの浮いた浴槽、黄ばんだコーキング――こうした部分は、もはや「築古だから仕方ない」では済まされません。
なぜ3点ユニットバスが嫌われるのか
3点ユニットバスとは、浴槽・洗面台・トイレが1つの空間にまとまっているタイプのお風呂のことです。1980~90年代のアパートには非常に多く採用されています。問題は、現代の入居者にとって「ビジネスホテルのお風呂で毎日暮らす」イメージに直結してしまうこと。湯船に浸かりながら隣にトイレがある状況に、心理的な抵抗を感じる方が大半なのです。
空室が埋まらない3つの根本原因
原因①:水回り設備が「築年数以上に古く」見えている
意外と知られていませんが、水回りは築年数より「経年劣化の見え方」で印象が決まります。同じ築30年でも、コーキングが黒ずみ、シャワーヘッドが古いタイプ、ドアパッキンがカビている浴室は、内見者に「築40年以上」の印象を与えてしまいます。一方、コーキング打ち替えと部分塗装、シャワーヘッド交換だけでも「築20年くらい?」と感じてもらえる物件は確実に存在します。
原因②:浴室乾燥や追い焚きなど「現代の標準装備」が無い
今の入居者にとって、浴室乾燥機・追い焚き・温水洗浄便座は「あって当然」のラインに上がってきています。私が管理している物件で実際に集計したところ、これら3点が揃っている部屋とそうでない部屋で、成約までの平均日数に2倍以上の差が出ました。とくに梅雨どきや花粉シーズンには、浴室乾燥機の有無で内見後の反応がはっきり変わります。
原因③:オーナー様自身が「自分の物件のお風呂に毎日入りたいか」を確認していない
結局のところ、空室の根本原因はオーナー様の物件への「鈍感さ」です。厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、これは私自身への戒めでもあります。所有して年数が経つほど、自分の物件の弱点が見えにくくなる。年に1度でいいので、ご自身が空室に上がり込んで、内見者の目線で水回りを30分眺めてみてください。本当に多くの気づきがあります。
実際に私が関わった案件で、20年間一度も空室の点検をしていなかったオーナー様がいらっしゃいました。一緒に部屋に入ってみたところ、浴槽の排水が異常に遅く、洗面台下の収納にはカビ、トイレの止水栓も固着していました。これらは内見の数分で入居検討者に伝わります。「住み始めたら不便そうな部屋」という印象は、賃料を下げても覆りません。
「自分なら住みたいか」を判定する5つのチェックリスト
具体的にどこを見るか迷ったら、次の5点だけでも確認してください。①浴室の鏡が曇りやくすみで自分の顔がはっきり映らない、②シャワーの水圧が弱い・お湯の温度が安定しない、③コーキング部分が黒や茶色に変色している、④洗面台のボウルに細かいヒビ・黄ばみがある、⑤トイレ便座が温水洗浄ではない。1つでも当てはまれば、それは内見者にもしっかり伝わっている弱点です。
「全交換」だけが解決策じゃない、現実的な修繕の選び方
ここからが本題です。ユニットバスの全交換となると、賃貸用でも50万~80万円、間取り変更を伴う3点分離リフォームなら100万~250万円かかります。空室1室にこれだけ投じるのは現実的でないケースも多いはず。私が現場で実践している、コスト別の打ち手を紹介します。
予算5万円以下:印象を激変させる「ピンポイント刷新」
シャワーヘッドの交換(節水・美容タイプ)、コーキングの打ち替え、鏡の交換、シャワーカーテンレールの新設、温水洗浄便座の取り付け。この組み合わせだけで、内見者の第一印象は驚くほど変わります。私の管理物件では、合計4.5万円の投資で2か月決まらなかった部屋が次の週末に決まった事例があります。
予算10~30万円:浴室パネル工法・エコバスリフォーム
ユニットバス本体を残したまま、内壁にパネルを貼り付け、浴槽を再塗装する工法です。工期は2~3日、費用は20万円前後で見違える仕上がりになります。「新品交換は無理だけど、古さは何とかしたい」という場合の最有力候補です。古いユニットの解体・搬出が不要なので、騒音や近隣トラブルも最小限で済みます。
予算50万円以上:思い切ったユニット交換または3点分離
築年数が35年を超え、給排水管にも不安が出てきたタイミングなら、いっそ全交換を検討してください。長期的には、賃料を5,000円~1万円上げられる物件に化けます。10年で回収できる計算なら、十分投資価値があります。さらに、近年は省エネ改修や子育て世帯向けリフォームに使える補助金制度も整備されてきました。自治体によっては数十万円単位の助成が受けられるケースもあるので、工事前に必ず確認することをおすすめします。
実例:築32年アパートを半年で満室にした打ち手
私が昨年お手伝いした神奈川県内の築32年アパートでは、6戸中3戸が空室で、家賃を相場より8,000円下げてもなお決まらない状態でした。オーナー様と相談し、空室3戸にだけ「浴室パネル工法+温水洗浄便座+シャワーヘッド交換」を集中投入。総額は1戸あたり23万円ほどでした。結果、改修後2か月以内に3戸すべて成約。しかも当初下げていた家賃を5,000円戻した条件で決まりました。「家賃を上げて成約する」感覚を一度味わうと、オーナー業の景色が変わります。
失敗しがちな修繕の落とし穴
逆に、私がよく見かける失敗パターンも共有します。最も多いのは「とりあえずクロスとフローリングだけ張り替えた」というケース。表層を新しくしても、肝心の水回りが古いままでは、内見者の評価は大きく上がりません。リフォーム予算を投じるなら、まず水回り、次に建具・収納、最後に内装、という順序が正解です。順番を間違えると、せっかくのお金が成約につながらないのです。
2026年の入居者ニーズを押さえる視点
少し視点を広げると、2026年は人口減少・単身高齢者の増加・物価高というトリプル要因が、賃貸市場に大きく影響します。新築の供給は減らない一方で、入居者の数は伸びない。つまり、選ばれる物件と選ばれない物件の差がさらに広がるフェーズに入っています。こうした時代に強いのは、立地よりも「設備が清潔で安心して暮らせる物件」です。立地は変えられませんが、水回りは変えられます。これがオーナー様にとっての一番の武器になります。
さらに、テレワークや在宅勤務が定着したことで、入居者が部屋にいる時間は明らかに増えました。日中もお風呂やキッチンを使う頻度が上がっているため、水回りの古さや使いにくさはこれまで以上に「我慢できないストレス」として認識されます。だからこそ、水回りの改善は今、最もコストパフォーマンスが高い投資なのです。
今日からできる、具体的な3つのアクション
大きな修繕の前に、まずは今日からできることに取り組んでみてください。
1つ目は、ご自身の空室に行き、スマートフォンで水回りの写真を撮ること。写真にすると、内見者と同じ「冷めた目線」で物件を見られます。撮ってみて気になる箇所が、まさに改善ポイントです。
2つ目は、管理会社や仲介会社に「正直なところ、ウチの物件のネックは何ですか?」と聞くこと。気を遣って言わないだけで、現場の担当者は答えを持っています。
3つ目は、信頼できる水回り業者に「予算5万・10万・30万でできる改善案」を3パターン見積もりしてもらうこと。選択肢を持つことが、判断のスピードを上げてくれます。
まとめ:水回りは「コスト」ではなく「未来の家賃」への投資
古いユニットバスの修繕は、目の前の出費だけ見るとどうしても腰が引けます。ただ、私の経験上、適切な水回り改修をした物件は、その後5~10年の入居率と家賃水準が確実に変わります。空室期間1か月分の家賃損失と、修繕費用、どちらが大きいか――冷静に計算する価値は十分にあります。
水回りが整っている物件には、人柄の良い長期入居者がつきやすい。これは18年間の現場で確信していることです。明日の入居者ではなく、5年後も住み続けてくれる入居者をどう迎えるか。その視点で、ご自身の物件をもう一度見てみてください。
「ウチの場合、何から手をつければいい?」「この築年数で交換すべき?それとも部分改修?」――そんなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。物件の状態と立地、想定家賃を伺ったうえで、現実的な打ち手をお伝えします。お困りごと相談はこちらからどうぞ。
