「真夏にエアコンが動かない…」その焦り、痛いほどわかります
梅雨が明けて気温が35度を超える日が続くと、エアコンなしの生活は文字通り命に関わります。そんなときに限って「あれ、エアコンが冷えない…」「電源を入れても動かない…」という事態が起きるものです。
私自身も不動産管理の現場で18年間、毎年夏になると入居者さんから「エアコンが壊れました!」という緊急連絡を何十件と受けてきました。真夏の室内は40度を超えることもあり、小さなお子さんやご高齢の方がいらっしゃるご家庭では、一刻を争う深刻な問題です。
「壊れたのは自分のせいじゃないのに、なぜすぐ直してもらえないのか」——その気持ちは当然です。
でも、ここで焦って自分で業者を呼んでしまうと、本来大家さんが負担すべき費用を自分で払うことになるケースがあります。逆に大家さんの立場でも、対応を間違えると入居者との信頼関係が一気に崩れてしまいます。
今日は、賃貸物件のエアコン故障について「誰が費用を負担するのか」「どう対処すれば損をしないのか」を、現場のリアルな経験をもとにお伝えします。
問題の本質:「設備」か「残置物」かで全てが変わる
賃貸物件のエアコントラブルで最も重要なのは、そのエアコンが「設備」なのか「残置物」なのかという区別です。ここを理解していないと、費用負担の話が根本からずれてしまいます。
「設備」とは、大家さんが物件の一部として設置し、賃貸借契約書や重要事項説明書に記載されているものです。エアコンが「設備」として記載されていれば、大家さんには修繕義務があります(民法606条)。
一方、「残置物」とは、前の入居者が退去時に置いていったもので、大家さんが「使えるならどうぞ」と残しているケースです。残置物の場合、大家さんに修繕義務はありません。壊れたら自分で対処するか、撤去するしかないのです。
契約書を確認せずに「備え付けだから大家さん負担でしょ」と思い込むのが、トラブルの第一歩です。
エアコン故障トラブルが深刻化する3つの原因
原因①:契約書の確認不足
入居時に契約書をしっかり読んでいる方は、実は少数派です。私の経験上、エアコンが「設備」か「残置物」かを把握している入居者さんは全体の2割程度しかいません。
契約書には「設備一覧」や「付帯設備」という欄があり、そこにエアコンが記載されていれば「設備」です。記載がなければ残置物の可能性が高いですが、不明な場合は管理会社に確認しましょう。
大家さん側も、契約書にエアコンの扱いを明記していないケースが散見されます。これがトラブルの火種になるのです。
原因②:自己判断で修理業者を手配してしまう
「暑くて我慢できないから、すぐ業者を呼ぼう」——気持ちはわかります。しかし、大家さんや管理会社に連絡せずに自分で修理を依頼すると、費用を自己負担しなければならないリスクがあります。
私自身も管理会社として、入居者さんが独断で10万円の修理を依頼し、後から「大家さんに請求してください」と言われて困った事例を何度も見てきました。大家さんが指定する業者と、入居者さんが選んだ業者では、費用が倍以上違うこともあります。
原因③:夏場の業者不足と部品供給の遅れ
7月〜8月はエアコン修理の依頼が殺到し、業者の予約が2〜3週間先まで埋まることが珍しくありません。2026年は2027年度の省エネ基準改定を控え、エアコン本体の価格上昇や在庫不足も予想されています。
「壊れてから慌てる」のでは遅いのです。夏本番を迎える前の対策が、快適な夏を過ごせるかどうかの分かれ道になります。
正しい対処法:エアコンが故障したらやるべきこと
ステップ1:まず自分でできる応急チェック
業者を呼ぶ前に、以下の基本チェックを行いましょう。意外とこれだけで解決することがあります。
・リモコンの電池切れではないか確認する
・ブレーカーが落ちていないか確認する
・フィルターが目詰まりしていないか確認し、掃除する
・室外機の周りに物が置かれていないか確認する
・エアコン本体のリセット(コンセントを抜いて10分待ってから再度差し込む)を試す
私の経験では、故障の連絡をいただいたうちの約15%は、フィルター掃除やリモコンの電池交換で解決しています。
ステップ2:管理会社・大家さんに連絡する
応急チェックで解決しない場合は、すぐに管理会社または大家さんに連絡しましょう。この際、以下の情報を伝えるとスムーズです。
・エアコンのメーカー名と型番(本体に貼ってあるシールで確認)
・症状の詳細(全く動かないのか、風は出るが冷えないのか等)
・いつから症状が出ているか
・応急チェックで試したこと
「連絡した日時」と「対応内容」は必ずメモしておきましょう。後のトラブル防止に役立ちます。
ステップ3:費用負担の確認
設備としてのエアコンであれば、原則として修理費・交換費は大家さんの負担です。ただし、入居者の過失(乱暴な使い方、長期間フィルター掃除をしなかった等)が原因の場合は、入居者負担になることもあります。
2020年の民法改正により、設備の不具合で物件の使用が妨げられた場合、賃料の減額が認められるようになりました。真夏にエアコンが使えない状態が長期間続く場合は、賃料減額の交渉も視野に入れましょう。
ステップ4:修理中の暑さ対策
修理や交換が完了するまでの間、以下の対策で乗り切りましょう。
・扇風機やサーキュレーターを活用する
・濡れタオルを首に巻く、保冷剤を活用する
・日中は図書館やショッピングモールなど涼しい場所で過ごす
・こまめな水分補給を心がける
・管理会社によっては、ポータブルエアコンの貸出をしてくれる場合もあるので相談する
今日からできる3つのアクション
アクション①:契約書を確認する
まず、お手元の賃貸借契約書を開いて、エアコンが「設備」として記載されているか確認してください。記載がない場合は、管理会社に電話して確認しましょう。これだけで、いざというとき「誰の負担なのか」で揉めることがなくなります。
アクション②:6月中にエアコンの試運転をする
「壊れてから動く」では遅い。6月の試運転が、あなたの夏を守ります。
冷房モードで最低温度に設定し、10分間運転してください。冷たい風が出るか、異音や異臭がないか確認します。問題があれば、業者が混み合う前に修理を依頼できます。大家さんの立場であれば、全室一斉の試運転点検を管理会社に依頼するのがベストです。
アクション③:緊急連絡先を確認しておく
管理会社の営業時間外や休日に故障が発生することもあります。24時間対応の緊急連絡先が契約書に記載されているか確認し、スマホに登録しておきましょう。大家さんは、入居者に緊急連絡先を周知しているか、今一度確認してください。
まとめ:備えあれば憂いなし、夏のエアコントラブル
賃貸物件のエアコン故障は、毎年必ず起きる問題です。しかし、事前の準備と正しい知識があれば、慌てることなく対処できます。
大切なのは3つ。①契約書でエアコンの扱いを確認すること、②故障時は自己判断せず管理会社に連絡すること、③夏前に試運転で点検することです。
入居者の方も、大家さんの方も、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
エアコンの故障やその他の設備トラブル、賃貸管理でお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。18年の現場経験をもとに、最適な解決策をご提案いたします。
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