「家賃を下げても決まらない」築古オーナーの深い悩み
「広告費を積み増しても、家賃を下げても、内見は入るのに申込みが入らない」——そんなご相談を、ここ数年本当によくいただきます。春の繁忙期が終わり、次の繁忙期まで半年。この期間に空室を埋められるかどうかで、その年の収支が決まると言っても過言ではありません。空室が1部屋長引くだけで、年間60万〜100万円の機会損失が発生することも珍しくありません。
私自身も、不動産管理18年・水回り施工15年の現場に立ち続けてきましたが、2026年に入ってからの賃貸市場は、これまでとは明らかに潮目が違います。都心部では家賃が上昇基調、一方で郊外の築古物件は募集期間が長期化し「二極化」がはっきりしてきました。データを見ても、築20年以上の物件の平均空室期間は年々延びており、築浅との差は開く一方です。
「古いから決まらない」のではなく、「古いまま放置しているから決まらない」のです。
空室が長引く本当の原因は「築年数」ではない
オーナー様から最初に聞くのは、決まって「もう築30年だから仕方ないですよね」というお言葉です。しかし現場を18年見てきた私の結論は、はっきりNOです。築年数は変えられませんが、変えられる要素はまだまだ山ほど残っています。
同じ築年数・同じエリア・同じ間取りでも、満室経営を続けているアパートと、1年以上空室が埋まらないアパートがあります。その差を分けているのは、決して「築年数」ではなく「入居者が実際に触る部分の状態」、つまり水回り設備の古さです。建物の骨格ではなく、指先が触れる部分の印象がすべてを決めています。
内見者は玄関を開けて30秒で「アリかナシか」を判断します。その30秒で最も強く印象に残るのが、キッチン・浴室・洗面・トイレ。ここが昭和〜平成初期の古いままだと、どれだけ外観や共用部をきれいにしても、申込みにはつながりません。
入居が決まらない3つの根本原因
原因①:3点ユニットバスがそのまま残っている
浴槽・便器・洗面台が一体になった「3点烦ニットバス」。かつてはワンルームの標準仕様でしたが、今や20代の入居希望者から強烈に敬遠される設備No.1です。SNSや口コミサイトでも「3点ユニットは絶対に避ける」という声が目立ち、検索フィルタで除外されてしまうケースすらあります。
実際に私が管理していた築32年のアパートでは、3点ユニットを独立洗面台付きの新しいユニットバスへ交換しただけで、1ヶ月空室だった部屋が翌週申込みが入りました。家賃は据え置き、むしろ5,000円アップです。投資額は約110万円でしたが、家賃アップ分と空室削減分を合わせて3年以内に回収できる計算でした。
入居者が逃げているのは「古い部屋」ではなく「生活の質が下がる設備」です。
原因②:キッチン・洗面の水栓が旧型のまま
意外と見落とされがちなのが水栓金具です。ハンドルを回すツーハンドル水栓、シャワーが付いていないキッチン水栓、洗面台下からポタポタ水が漏れる状態——これらは内見時に「この物件、手入れされていないな」というシグナルを強烈に発します。細部こそ、オーナーの管理姿勢がそのまま表れる場所なのです。
水栓交換自体は1箇所あたり3〜5万円の工事。全体のリフォームに比べれば微々たる投資ですが、内見時の印象は驚くほど変わります。特にシングルレバー混合栓への交換は費用対効果が非常に高く、私も最初に勧める定番メニューです。
原因③:トイレ・排水の「ニオイ」を放置している
内見中、入居希望者が黙って帰ってしまう物件には共通点があります。それは、下水臭・カビ臭が残っていること。どんなに壁紙を貼り替えても、ニオイが残っていれば一発アウトです。
ニオイの原因の8割は、排水トラップの封水切れ、排水管内部の汚れ、換気扇の劣化です。「芳香剤を置けば大丈夫」と考えるオーナー様もいらっしゃいますが、鼻の肥えた20代〜30代の入居希望者には一瞬で見抜かれます。むしろ芳香剤の甘い香りが「何かを隠している」という印象を与え、逆効果になることすらあります。
空室を埋めるための実践的な解決策
解決策①:水回り4点の「優先順位付き更新」
すべてを一気に新品にする必要はありません。私がオーナー様にいつもお伝えするのは、次の優先順位です。投資は集中と選択が鉄則です。
第1位:3点ユニットバス → 2点分離(浴室と洗面を独立)へ。費用は70〜150万円が相場ですが、家賃アップ+早期成約でほぼ確実に回収できます。
第2位:キッチン水栓とシャワー水栓の交換(合計5〜10万円)。内見時の印象を即座に変えられます。
第3位:温水洗浄便座の設置(3〜8万円)。これは入居希望者の必須条件になりつつあります。
解決策②:補助金・減税制度を最大限活用する
2026年現在、バリアフリー改修・エネ改修・子育て支援型リフォームなど、賃貸オーナーでも使える補助金・減税制度は複数あります。とくに高断熱浴槴にはの交換や節水型トイレ設置は対象になるケースが多く、工事費の1〜3割が戻ってくることも珍しくありません。自治体独自の制度もあるため、物件所在地の役所窓口にも必ず確認してください。
着工前申請が原則のため、施工会社に必ず「使える補助金はありますか」と確認してください。後から気づいても手遅れになるケースがほとんどです。
解決策③:内見導線の「ニオイ」を消す
工事まで踏み切れない物件でも、今日からできることがあります。排水トラップに水を張り直す、排水管高圧洗浄を入れる、換気扇フィルターを新品に交換する——これだけで内見時の第一印象は一変します。費用は1部屋あたり2〜3万円程度で済みます。
入居者はスペックを比較しているのではなく、「ここで暮らす自分」を想像できるかどうかで決めています。
今日からできる具体アクション
この記事を読み終わったら、まず以下の3つを実行してみてください。難しい作業は1つもありません。
1つ目:空室になっている部屋に自分で入ってみて、玄関を開けた瞬間に「ニオイ」がしないかを確認する。していたら、その日のうちに排水トラップに水を流し、換気を回す。
2つ目:浴室・キッチン・洗面・トイレの写真を撮り、同じエリアの募集中物件とポータルサイトで見比べてみる。相場と何が違うかが一目瞭然になります。
3つ目:水回り4点の中で、自分の物件が「最も見劣りしている箇所」を1つだけ特定する。全部を直すのではなく、1点集中で更新するのが投資効率の最大化につながります。
まとめ:築古でも「選ばれる物件」に変えられる
2026年の賃貸市場は、確実に二極化が進んでいます。しかし、それは「築古は終わり」を意味するのではなく、「手をかけた築古は選ばれ続ける」という時代が来た、ということです。手をかけているかいないかが、これまで以上に露骨に数字に出る時代になりました。
私がこの15〜18年の現場で確信しているのは、入居者が本当に見ているのは築年数ではなく、水回りの快適さ・清潔感・安心感だということ。そしてそこは、オーナー様の判断ひとつで必ず変えられる領域です。
もし今、空室が埋まらずに悩んでいらっしゃるなら、一度現場の目線で診断させてください。どこから手を付ければ最小投資で最大効果が出るか、15年の施工経験と18年の管理経験からご提案いたします。
お困りごと相談は、お気軽にご連絡ください。築古物件を「選ばれる物件」に変える一歩を、一緒に踏み出しましょう。
