実務で火災保険の申請に携わっている自分の率直な感想です。
じゃあ、虚偽の報告で保険会社を騙せばいいの?
いや、そうではありません。
火災保険において被害を主張することは契約者の権利でもあり自由なのです。
え?どういうこと??
最終的には保険会社が認定するのは間違いありません。
じゃあ、やっぱりダメじゃん!!
そう諦めないでください。
主張の違い、見解の違いは常にあるものですし、ゼロイチの話ではないことを理解してください。
では、どうすればいいのか。
以下、火災保険の基礎知識から具体的に触れてみます。
火災保険の基礎知識について
火災保険はいろいろな被害に使えます。
証券を確認すると下記のような項目があるはずです。
古い保険だと若干違う可能性もありますが基本的には似たようなものです。
補償内容
火災、落雷、破裂、爆発
風災、雹(ひょう)災、雪災
水災
盗難・水濡(ぬ)れ等
破損等
地震・噴火・津波
右側に「〇」や「×」もしくは「ー」の記載があるはずです。
〇の項目は補償対象となります。
これだけ見ても火災が起きた時だけに活用する保険ではないことが分かると思います。
なんど使っても保険料は上がらない
保険を使わない理由に車の保険のように使うと料金が上がると認識している人も少なくありません。
火災保険は基本的に掛け捨てのため何度使っても保険料は上がらないのです。
申請回数についても制限はありません。
躊躇せず申請すべきです。
保険金(給付金)の使い道は自由
保険金が支払われた場合、使い道は自由です。
被害が認定された時点で被害に対する対価となり「被害=保険金」が成立します。
必ず工事をしなければならない訳ではありませんが、将来同じような被害があった際は保険が適用されないこともあるので正しく認識しておく必要があります。
申請期限は被害から3年間
火災保険の申請期限は原則として被害に遭ってから3年間です。
時間の経過ととも経年劣化と被害の区別がつかなくなるので早めに申請することが大事です。
火災保険を自分で申請することはできるのか
結論から言うと火災保険の申請を自分で行うのは難しいです。
保険業務に携わる立場の自分でも申請は面倒です。
これを個人で申請するとなればそれなりに大変なのは察しがつきます。
理由①自分で被害を確認できない・確認しようとしない
台風が過ぎ去った後に建物を確認しているでしょうか。
多くの方は自分が建てた家、工務店やハウスメーカーを信頼し切っています。
被害の確認もせず自分の家に限ってそんな被害は無いという認識が根底にあるのです。
実際には強風で飛んできた物で外壁にヒビが入っていたり、屋根のスレート板が1枚飛んで無くなっているなんてこともあります。
屋根や雨どいなどが一番破損しやすいのに確認することが難しいことも要因のひとつ。
今はドローンでの調査が主流になっていますが自分でやれる人は稀です。
理由②事故原因の特定・書類作成が難しい
被害を見つけてもどのような事故だったのか証明する必要があります。
気づいたときには台風が過ぎ去ってから数ヶ月が経過している場合も少なくありません。
明確に台風を原因とするにはそれなりの建物知識が求められます。
また、申請書類を作成する際も保険会社が受付しやすい書き方があります。
これを個人で何の予備知識もない中でやるのは難しいと言えます。
理由③保険会社・代理店の都合
わたしが経験した実例。街の小さな保険代理店を利用して火災保険に加入した大家さん。
明らかに保険に該当する事故があったため、管理会社として大家さんに代わり事故報告したところ補償対象外と言われたことがあります。え?どういうこと??
そうです。街の小さな保険代理店は保険会社の味方なのです。
事故を鑑定する鑑定人も保険会社から雇われた人。
どうすれば保険金を支払わないで済むかを考えるプロとも言えます。
口には絶対に出しませんが本音はこれです。
火災保険申請をうまくやる手順やポイント
基礎的な内容から実際の申請手順やポイントなどに触れてみます。
読んでいる方は何らかの不具合を発見していると仮定して進めます。
何も発見していない、とにかく調べてみたい、「うちも対象かな?」と思う方は火災保険申請サポートへの相談も選択肢のひとつです。
悪質な業者もいますので注意事項を記載しておきます。
火災保険申請サポートを利用する場合の注意点
〇完全成功報酬型(保険が下りた場合のみ報酬発生)を選ぶ
〇工事請負契約がセット(条件付き)の業者は選ばない
〇成功報酬額が高額(40%以上)
〇会社の実態が怪しい(HPや口コミなどが少ない)
火災保険と工事は別
保険が適用されたら工事をしなければいけないとお考えの方が多いのではないでしょうか。
これは間違いです。
あくまでも火災保険の申請と工事は別で考えて下さい。
例として、保険会社へ提出した工事見積が50万円だったのに対して、保険の査定額が30万円だった場合。
30万円以内で収まる工事内容に変更するか、工事を実施しない選択肢もあるのです。
①物件の調査
気になる不具合個所の写真を撮りましょう。
アップ写真と引いた写真、別角度からの写真も数枚撮っておきましょう。
屋根外壁であれば信頼できる業者を探して診断してもらうことも可能です。
ホームページ等で調査や見積までは無料と明確に記載のある業者が望ましいです。
保険が下りる前に費用が発生する業者はすべて詐欺だと認識して問題ないです。
絶対に騙されないでください。
ここでひとつポイントです!
5年~10年後の将来まで被害が拡大しない内容で見積すること。
例として、屋根外壁に被害があり雨漏れした場合。屋根の材料を交換すれば基本的には修理完了ですが、濡れてしまった木材やボード、断熱材は大丈夫でしょうか。
少量の雨漏れだからと表面的な補修で済ませることは危険です。
数年後にカビが発生し大変なことになる可能性は否定できません。
見積を取得する際は被害を受けた場所、その被害により影響を受けた場所までの復旧させる見積を取得するようにしましょう。
実際に工事をするかどうかは別の話なのでご注意ください。
②保険会社へ事故報告
被害を見つけたらあとは保険会社へ事故報告をします。
今は簡単にメールで報告ができるのでこちらが便利です。
インターネット事故受付窓口(主要3社)
損保ジャパン
東京海上日動
三井住友海上
ここで注意点です。
事故報告は「簡潔明瞭に」記載することが大事。
例として載せている文言を利用する
・台風による強風で木の破片などが窓を直撃して割れた
・積雪の重みで屋根が破損した
・雷が自宅や自宅付近に落ちて、建物や家財が損傷した
被害内容に近い定型文を利用しましょう。
余計なことは書きません。
保険請求時「事故状況の報告書」に詳細を書くからです。
事故報告をすると数日後に申請用の書類が届きます。
③工事見積書・報告用の書類や写真を準備
工事見積書は依頼した業者が作成したものを利用してください。
「一式」で通用するのは15万円程度まで。
基本的に項目はできるだけ分ける。
あとは事故状況の報告書です。
こちらは保険会社から届いた書類に手書きでもいいですし、別紙として報告書を作成しても大丈夫です。
わたしの場合は図面や写真をパソコンに取り込み、そこに矢印や被害範囲、見解などを載せてしまいます。
こうすることで一目でわかりやすい資料になるので保険担当者にも理解されやすいです。
④保険会社へ必要書類を提出
保険請求書と事故報告書、被害写真を保険会社へ提出します。
提出する前にすべてコピーをとっておきましょう。
保険会社から詳細の聞き取りがあった際に資料が手元にないとうまく説明できない場合があります。
⑤保険会社による審査
わたしの肌感覚では30万円を超えると鑑定人による現地確認が行われる感じ。
逆に20万円程度までの金額であれば書類審査で完結するということです。
この辺は保険会社によって判断基準がまちまちだと思いますので一概に言えませんが、鑑定人を呼ぶくらいの気持ちで申請しましょう。
申請は契約者の権利であり、被害についての見解も人それぞれ違って当たり前なのです。
⑥結果の通知
保険会社から審査結果の連絡がきます。
基本的には電話かメールです。
認定となれば金額を確認し承認することで数週間後には保険金が振り込まれます。
減額や否認となった場合は詳細を確認します。
保険会社の見解を確認し、こちらの主張とズレが大きい場合は追加で必要書類を提出するなどの措置をとります。
あまりにも見解が違い過ぎる場合は鑑定人を呼んで再調査を依頼することも検討しましょう。
前にも記載しましたが保険の申請は契約者の権利です。
見解の相違はよくあることですので根気強く主張を繰り返しましょう。
⑦補修もしくはリフォームを実施(任意)
工事に使える金額が確定したら、予算内で施工可能な業者を探します。
見積を取得した業者が信頼できるようであれば率直に相談しましょう。
まとめ
冒頭にお伝えしたように火災保険(地震保険)をうまく活用している人は少ないです。
まずは火災保険を正しく理解することが第一歩。
まずは申請方法をよく学んでおきましょう。
どうしても「自分では無理」と思う方は火災保険申請サポートを利用することも可能です。
但し、こちらを利用する場合は騙されないことに集中すること。
保険認定前に署名捺印・サインを求められたら詐欺だと思い警戒しましょう。
知らないことで結果的に損してる。
そんなことにならないよう火災保険についてしっかり勉強しておくことを強くお勧めします。