土地購入から新築アパートは絶対にうまく行かない!騙されるって聞いたけど本当なの?
でも、建ててる人はいるし、もしやるならどこに注意すべきか知りたい!
こんなお悩みを解決します。
- 本記事の内容
- 新築アパート利回り公開
- 注意したことを具体的事例で紹介
- 身に着けるべき知識・スキル
- 本記事の信頼性
この記事を書いているわたしは現役の不動産管理会社勤務。日々の業務で賃貸経営のコンサルをしています。
ほぼ失敗の賃貸事業でも立て直すプランを作成するなど、様々な角度からアドバイスしている経験を活かし記事にします。
皆さんが検討中のプランがあれば是非比較して活用下さい。
※本記事はお金に余裕があって借金なんてせずにアパート事業ができる方の参考にはなりません。
お金はないけどサラリーマンの信用だけでアパート事業をやってみたい!
そんなサラリーマン向けに現実的な注意すべき点をまとめた記事となります。
新築アパート利回り公開
わたしが実践した土地購入から新築アパート建築の利回りを公開します。
完工2カ月で満室。1K・1LDK12世帯。2年で3回退去も即入居。
表面利回り
表面利回り 8.0%
= 年間家賃収入 880万円
÷ 物件購入価格 11,000万円
年間家賃収入内訳
- 家賃6万円×12戸 = 72万円
- 月72万円×12カ月 =864万円
- 敷地外駐車場 = 16万円
- 年間家賃収入 =880万円
物件購入内訳
- 建物価格 = 8,560万円
- 設備価格 = 470万円
- 土地価格 = 1,680万円
- 諸経費 = 290万円
- 購入合計 = 11,000万円
実質利回り
実質利回り 1.8%
=(880万円-680万円)
÷ 11,000万円
年間経費内訳
- 年間銀行返済 = 460万円
- 管理委託費 = 75万円
- ネット通信費 = 20万円
- 定期清掃費 = 15万円
- 固定資産税 = 60万円
- 退去時現状回復費 = 20万円
- 大規模修繕積立費 = 20万円
- 火災保険積立費 = 10万円
- 年間経費合計 = 680万円
※上記に加えて家賃減額率・空室率での収入減、広告料負担も考慮するとさらに実質利回りは低下します。
こんなに経費がかかるの?そんなにお金が残らないのでは?
アパート事業は経費がたくさんかかります。できるだけ抑える方法はありますが、ここの認識が甘いと後々苦労することになります。
皆さんはどうでしょうか。担当営業に上記のような経費を見込んでいるのかをしっかり確認しておくとよいでしょう。
年間銀行返済
フルローン 金利1.55% 返済期間30年 10年固定 団信あり
サラリーマンの武器を最大限に活かしたフルローン。
家族の反対を押し切るための団信。
管理委託費
某サブリース会社。業界の中ではまともな方だと思っている。
はっきり言って仕事をしながらアパートの自己管理は無理。
サブリースのデメリットをできるだけ下げてメリットをたくさん頂く思考で乗り切る。
ネット通信費
防犯カメラ2台付にしています。ゴミ置場は常に監視。綺麗な物件を維持するにはカメラは必須です。
駐車場側にも設置。近年、駐車場の防犯カメラを見せてほしいとの要望が何度かあります。
フルメンテにしているので機器の不具合などはすべて導入会社持ちです。
定期清掃費
これ要らんと思うくらい自分で掃除してます。
ここは管理会社や清掃業者に利益提供です。
固定資産税
予定より若干高い。試算間違ったのか高めに設定されたのか。
クレジットカードでお得に支払いもシステム利用料がかかったりするので注意が必要です。
退去時現状回復費
2年経過で3回退去。今のところ負担なし。
年間20万円は10年間平均と見ています。
11年目以降は2倍くらい必要かもしれません。
費用を抑える時は最低限の工事のみ管理会社に依頼して残りは自分でやります。
大規模修繕積立費
10年後に200万円で鉄部塗装と屋根塗装。外壁はコーティングの予定。
管理会社には絶対にやらせない。自分でやる。
火災保険積立費
新築時に火災保険10年50万円。地震保険5年20万円。
この水準のままなら10年後までに90万円は必要。
保険料の値上げもありそうなのでもう少し積立額を増やすかも。
基本的にアパート事業利益には手を付けずに2棟目、3棟目を中古で狙います。
注意したことを具体的事例で紹介
事業を始めるには土地の選定と賃貸需要の調査が重要です。
わたしが実際に購入した土地の情報や賃貸需要を調査した内容を詳細に記載します。
是非参考にしてみて下さい。
土地購入
できるだけ相場より安く購入できることができれば利回りが良くなります。ですが、あまりにも安い土地は気を付けましょう。見た目の接道と実際の接道が違う、借地権や地中埋設物、軟弱地盤などにより想定以上の費用がかかる場合があります。
近隣取引相場
近隣の戸建建売分譲地 坪25万円前後
土地の広さ 50坪~
建売販売価格
3,500万円 ~ 4,000万円
一部ハウスメーカー 4,000万円超
売り出し~3カ月程度で完売
購入内訳
購入価格 1,680万円
購入面積 約500坪 坪3.36万円
アパート用地 約300坪
敷地外駐車場用地 約100坪
位置指定道路持分 約100坪
比較的安く購入できた理由
- 出入口となる道路が狭い旗竿地
- 位置指定道路の申請が必要
- 水道管引き込み費用がかかる
- 売主の売却意思が強い
出入口となる道路が狭い旗竿地
一般的に旗竿地は人気がありません。出入口となる道路が若干狭いのですが、実際には位置指定道路でもあるのでそれなりの幅員は確保されています。しかしながら道路両側がブロック塀だったので狭く感じるのが欠点でした。
位置指定道路の申請が必要
購入後、一部をさらに位置指定道路とする申請が必要でした。買う側にとってはマイナス材料だったと言えます。
水道管引き込み費用がかかる
問題は水道管の引き込み費用。市道から水道管を新しく引き込まないと水圧不足でアパート建築はできない場所でした。水道管がループできると水圧低下を補えたりするのですがそれも難しい。100m以上のアスファルトを剥がして施工するのも多額の費用がかかるため現実的でない。
そんな問題を解決できたのが他人の土地を使用して引き込みという力技。
車両乗り入れの接道とは別に、使われていない雑種地が市道まで続いていたため、ここに水道管を埋めることにしました。当然、すべて同意書を頂いて諸官庁の許可も取りました。
売主の売却意思が強い
売主が比較的安価で売ってくれた理由は単純に今まで売れなかったから。
何度か売るチャンスはあったようですが、買主側の計画がうまく行かずに頓挫するケースが多かったようです。
売主さんが高齢でもあったので現金化したい気持ちが強かったことも要因のひとつ。
アパートを建築すると居住者が増えて地域全体の雰囲気もいい意味で変わります。
そんな意味でも近隣の皆さんに協力頂けたのかなと感じています。
賃貸需要
次は賃貸需要について触れてみます。
当たり前ですが建物を建てても入居がつかなければ事業は成り立ちません。
賃貸事業が成り立つ需要があるのか。気をつけたポイントをいくつか記載します。
調査すべきポイント
- ネットに出ている空室戸数
- 近隣都市までの交通アクセス
- 1km圏内に買い物施設がある
- 築20年超の賃貸物件があり満室
ネットに出ている空室戸数
単純にそのエリアでどれくらいの空室があるのかをチェックします。〇〇市だと範囲が広すぎるので番地前の住所(1km四方程度の広さ)で検索をかけてみる。わたしが実際に調べたときはレオパ物件で2戸。その他に1戸の空きがあるだけでした。間取りが選べるほど空室が目立つ場合は原因をしっかり調べる必要あり。一部の間取りが偏って空室が目立つ場合は需要に合わない間取りが供給されている可能性があります。間取りの選定についても参考になります。
近隣都市までの交通アクセス
日常生活で重要なのが勤務先までのアクセス。誰もが基本的には働いていると思いますが職場までのアクセスしやすい環境はそれなりに重視されます。それと、隣の市町村までの交通アクセスも重要だったりします。賃借人の勤務先情報を分析すると、主要都市郊外の物件では四方八方に勤め先が分散する傾向があります。主要都市への通勤が4割、その他の都市へ分散6割といった感じ。通勤圏という意味で幅広く需要が集まるのでそんな視点も大事だったりします。
1km以内圏内に買い物施設がある
ちょっと車で走ればすぐに着く距離に買い物施設があること。近ければ近いほど良いのは間違いありませんがそんな土地は基本的に高いです。現実的にはせめて1km圏内には買い物施設があることを確認しておきましょう。できれば大型ショッピングセンターみたいな、ホームセンターや大型スーパー、薬局や100円ショップ、レストランなどが同一敷地にあるような施設があるといいです。このような施設は郊外にあったりするので掘り出し物の土地があるかもしれません。
築20年超の賃貸物件があり満室
エリアにある築古アパートをチェックしてみましょう。築20年を超えるような物件で満室になっていればそれなりに需要はあります。当然、家賃は下落しているだろうけど満室になっていることが重要です。わたしが建築したエリアを詳しく調べてみると、車ですぐのところに歴史ある温泉があり交通の要所であったことから古くから一定の需要はあったようです。それを象徴するのがレオパレス物件の1Kが築20年超で家賃5万円を維持していたこと。誰もが見向きもしないエリアでも細かくチェックしてみると思いもよらない需要が発見できたりします。
身に着けるべき知識・スキル
賃貸事業を長期的に安定させるには何よりも経営者自身が正しい知識を身に着けることが大事です。
どんなリスクがあるのか。どう対処すべきなのかを下記項目ごとに紹介しますので是非参考にしてみて下さい。
身に着けるべき知識・スキル
- 保険知識
- 建物知識
- 法的スキル
- 入居付スキル
保険知識
賃貸事業を守るためには建物保険とセットがマストとわたしは考えています。
昨今、異常気象と呼ばれる災害が全国各地で発生、加えて地震被害も毎年どこかで起きています。
こんな中で賃貸事業を安定させるには「保険を適切に活用する知識習得」が私の答え。
理由は保険を適切に活用していない人が多いから。
代理店として保険業務にも携わる身で感じるのは保険を活用しない人があまりにも多いこと。
「フェンスが曲がっている」「物置が凹んでいる」「駐車場の排水桝が壊れている」これすべて保険で対応可能です。
1点ご注意頂きたい点があります。
基本的にオールリスクの保険に入ること。家賃補償の取捨はお好きに。
不具合が発生した際に問題となるのが「明確に何の不具合」で「どの保険が適用」されるのか不明な場合です。実務においてはこれがとても多い。そんな時に助かるのがオールリスクの保険です。保険会社もオールリスクに加入の建物なら保険適用しやすいのです。逆に契約していない特約があればそれを理由に保険適用を見送られることもあります。
保険料は確かに高いかもしれませんが賃貸事業においての保険料としてははっきり言って格安です。保険に損得は無いですが一回保険が適用されればチャラになるレベル。
賃貸経営はリスクの塊であることを認識のうえ保険に対する知識をしっかりと高めておきましょう。
建物知識
建物に詳しくないとはっきり言って管理会社やリフォーム業者からカモられます。
騙されないためにも自分自身が建物に詳しくなることが大事です。
今自分が住んでいる部屋、建物についてひとつひとつ勉強してみましょう。
建物はどんな構造なのか、屋根材、外壁材、フェンス、土間コンクリートやアスファルト、内装仕上げ材やエアコン、キッチンなどの水廻りはどんなメーカーが使われていてどの程度の金額なのか。ネットで調べてもいろいろ出てきますので一定水準程度の価格は把握しておくことをおすすめします。
法的スキル
賃貸事業をしていると理不尽で法外な請求をしてくる入居者がたまにいます。
管理会社がきちんと対応してくれれば問題ないですが、最終的には所有者責任とのことで賠償金を請求される場合があります。
例えば、トイレの流れが悪いからホテルに宿泊した。宿泊した費用を出せ。不具合対応のために仕事を休んだから日当を出せ。これは管理業務に携わっていて実際にあった事例になります。
このような場合は法的にどうなのかをしっかりと勉強してくことが大事。
迷惑をかけているから仕方ないでは手元からどんどんお金が無くなります。
令和2年4月より施行された改正民法では賃料減額ガイドラインが策定されています。居住中の不具合に対してどの程度の家賃減免が妥当なのかを定めています。必要な家賃減免や一定範囲内での賠償金支払いはやむを得ませんが法外な請求に対しては毅然と対応することが重要です。
入居付スキル
安定して入居させるにはいくつか押さえるポイントがあります。
- 仲介業者に物件を覚えてもらう
- 広告料はケチらない
- おもてなしの品を必ず置いておく
- 物件美化・室内美化は徹底する
仲介業者に物件を覚えてもらう
仲介業者にとって物件は数ある中のひとつに過ぎません。そのな中で紹介してもらうには仲介業者に認知してもらうことが重要です。地域最安家賃で何もしなくても申込が入るような物件であれば問題ありませんが、少なくとも自由競争の中で揉まれる家賃設定であればしっかりとPRしておきましょう。わたしの場合、仲介業者には定期的に差し入れをしています。カップラーメンや地域のお土産品など。やっぱり担当者も人間ですから日頃からお世話になっていれば成約に向けて頑張ってくれるものです。
広告料はケチらない
仲介業者にとって広告料売上は必須です。綺麗ごとを言ってもやっぱり売上が無いと仲介で生きていけません。そんなところを逆手にとってPRです。この物件のオーナーさんは広告料を頂けると認識してもらえれば紹介しやすい環境が整います。空室が少なければ広告料50%でもいいですし、今は100%出しますよでもいいです。担当者から今売り上げが足りないので決めたら100%貰えますか?なんて交渉も入ったりします。そんなやり取りができるようであれば合格かもしれません。
おもてなしの品を必ず置いておく
案内が入るようになれば今度は室内をきちんとしなければなりません。スリッパやおもてなしの粗品などを置いておきましょう。お客様に歓迎されている雰囲気を演出すれば入居後も安心して生活できると思って頂けます。100円ショップにあるような造花でもいいですので綺麗に魅せることを忘れてはいけません。
物件美化・室内美化は徹底する
管理を業者に任せている場合であっても物件美化は自分でやる気概が必要です。遠方で難しい場合は管理会社に写真を送ってもらうなどオーナーとしてどこに注力しているのかを明確に伝えることが重要。
まずは外観から。案内で敷地に入る際の第一印象が大事。ぱっと見で汚い箇所があったり清掃が不十分だったり。ゴミ置場が汚れている、粗大ごみが放置されている、そんな時も積極的にオーナーが処分しましょう。誰が出したとか犯人捜しをしていても現状が汚い状態は変わりません。即時、撤去したうえで予防措置を講じるようにしましょう。防犯カメラの設置が今までの経験上では有効です。安価なカメラもありますので基本的には必ず設置をおすすめします。
次は室内。退去補修工事が終わったら細かいところまでチェックします。明らかに業者の不手際である場合を除いては自分で細かいところまで直します。特に水廻りが汚いと女性が嫌がりますのでここは入念にチェックしておきましょう。
それから悪臭について。空室が長引くと封水が切れて臭いが出ます。定期的に水を補充したり芳香剤を設置しておきましょう。
まとめ
- 表面利回り 最低8.0%前後を目安にする
- 実質利回り 最低1.8%前後を目安にする
- 賃貸需要 調査項目をチェックする
- 経営知識 知識を身に着けリスクに備える
土地購入からの新築アパート経営。
この記事内容を踏まえて決断すればある程度は成功します。
あとは適正に経営管理できるかどうか。
また別な記事で紹介しますが、確定申告が必要になりますし節税についても勉強しなければなりません。
どんぶり勘定で失敗するアパート経営者もたくさん見てきましたので管理の仕方についても追って触れたいと思います。
わたしが使っている会計ソフトのリンクを下記に貼っておきます。
是非使ってみて下さい。